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2023.09.04 | テスト

東南アジアの諸都市の街づくりに学ぶ~3 つの国の無電柱化の紹介~

グランじお80号

じおの羅針盤-GEO’S COMPASS-
東南アジアの諸都市の街づくりに学ぶ、3 つの国の無電柱化の紹介

皆さん、こんにちは!今回は経済成長の著しいアジア三国の無電柱化事情についてご紹介したいと思います。

シンガポールにおける無電柱化

シンガポールは小国ながら貿易、交通及び金融の中心地の一つで、世界第4位の金融センター、外国為替市場および世界の港湾取り扱い貨物量で上位2港のうちの一つです(2021時点)。無電柱化率においてもケーブル延長ベースでは2001年以降100%となっており(国交省データ)、景観の向上と緑化に非常に熱心な国です。

歴史は50年と比較的浅いのですが、建国当時のリー・クワンユー首相の「緑に溢れたGarden City(庭園のような街)は、住民にとって住みやすいだけでなく、外国からの投資を引き付ける一つの重要な要素となる」という考えのもと都市の緑化を推進してきました。シンガポールは建国50周年の節目に今後City in a Garden(庭園の中に街がある)を目指して緑化政策をさらに進めることを定めました。緑化政策と同様に無電柱化政策も熱心に進めています。私達が暮らしている街中は普通に電柱が建ち、電線が張り巡らされています。かたやシンガポールの街中には電柱・電線がありません。

そのことに疑問を持つか持たないかに、日本とシンガポールの差があるように思えます。
またシンガポールでは2014年に地中情報の3D化も積極的に導入し、無電柱化も含めた施工技術の効率化をはかっています。
これに対して日本では2次元の図面をもとに地面を掘り、掘ってみれば図面にはない不明な管などが出てくることが日常の状態で、それがコストアップの要因にもなっています。

日本とシンガポールの差は、市民の都市景観に対する意識の差ではないでしょうか。日本はGDP世界第三位という紛れもない先進国ですが、もっと暮らしの豊かさに目を向けるべきではないでしょうか。

 

タイにおける無電柱化

近年になって無電柱化を始めたタイはどうでしょうか。タイといえば2014年のクーデターによって現在、軍政下におかれています。また首都バンコクといえば都市圏人口は1600万人を超えていて、世界有数の大都市圏です。そのような街の電柱はどうなっているのでしょうか。

 

◇以前取材したタイ在住のインターン学生より
タイでは、1984 年に無電柱化を始めましたが、バンコクでも現在は約48.6km しか進んでいません。 電柱の中でも特に目立つのは、通信ケーブルです。かなり老朽化している電柱は、依然として重要な存在ですが、傾いています。倒れていつ通行人に被害を及ぼすかわかりません。
また、通信ケーブルが散らかって 2 メートル未満の地面に ぶら下がっていたりしています。

現在、バンコクの電柱は無秩序に電線を共架し、非常に危険な状態となっています。停電や漏電が頻発し、2011年の大規模な洪水の際には、45人もの感電死が報告されたそうです。無秩序な配線による感電死の増加は19世紀末のマンハッタンと状況と非常に似ています。ニューヨークのマンハッタンもブリザード被害を受けて本格的な無電柱化に乗り出しました。

さて、大規模な漏電・停電や多発する感電死を受けて、タイの首都圏配電公社(MEA: Metropolitan Electricity Authority、内務省管轄下の国営企業)は、2021年までにバンコク市内の214.6㎞の区間で電線類を地中化する計画を発表しています。
その目的は①電力の安定供給②景観への配慮③安全性の3点です。

異常な共架への対応という意味合いが強いようですが、軍事政権が強硬に美化政策を進めているという側面もあって、大量高速輸送線であるスクンビット通りの無電柱化を完了させるなど整備実績を上げているようです。

タイの無電柱化施工は、やはり日本とはスピード感が違います。日本の第8期無電柱化推進計画では5年間で4000㎞の無電柱化を行いますが、「着手」なので完了するのはまだまだ先となりそうです。
今の日本ではほぼ追いつくことはできません。なぜならタイは現状軍政下という「ドラスティック」な改革が可能な政体にあるので、日本がそのままタイの状況を受け入れることは難しいからです。下の写真にあるように、タイでは施工に少し不安な面も見受けられます。

民間の技術開発を促し、採用すること。採用しないことには民間技術は疲弊してしまいます。道路管理者である行政担当者、電線管理者(電力会社・通信会社)は「できない、使えない」を前提とせずに「試して、使って、工夫して無電柱化をする」ことが無電柱化を進める近道になるのではないでしょうか。民間も含めた連携が大事です!

ベトナムにおける無電柱化

ベトナムはご存知の通り社会主義国なので、日本とはそもそも政体が違うという点ではタイと同じです。また、ベトナムは名目GDPでも2,200億ドルと先の2国よりも低く、発展途上国と言って差し支えないでしょう。
国土交通省の資料によりますと、2011年からホーチミン市人民委員会と電力会社・通信会社との協定により、無電柱化を本格的に実施することになりました。2016年~2020年で1,800㎞の地中化に総額4.2兆ドン(約205億円)を投資する計画が策定されました。

また、中心部は2020年までにすべて地中化し、周辺部も地中化するという計画です。東京都の無電柱化推進計画と似ていますが、ホーチミン市の無電柱化率は中圧線で31%、低圧線で13%と日本よりも無電柱化率が高いです。
※これに関しては数字のマジックで、実は東京都の整備済み延長は913㎞、ホーチミン市は978㎞と少しの差です。東京都に限らず日本全土は細かな道路網で張り巡らされています。道路延長が長ければそれだけ無電柱化率が低くなるのです。

さて、ベトナムの無電柱化ですが、計画自体は人民委員会が策定しますが、施工はEVN(Electricity of Vietnam:ベトナム電力総公社)と通信4社(VNPT(Vietnam Posts and Telecommunications Group:ベトナム郵政通信総公社)等)が執り行います。

ここでの費用は事業者の自費負担です。しかし電柱を地下に埋めることが電線管理者の責任と考えているわけではなく、施工した会社がケーブルの使用料を取ることを許されているため無電柱化を行っています。またタイと同様に電柱には通信会社のケーブルが多数共架されており、マーキングしてもすぐにわからなくなるので、逆に地中のほうが維持管理しやすいという事情もあるようです。

近年ベトナムでは急速に無電柱化が進んでいますが、その原動力は電気・通信事業者・施工業者の自費負担で、それをするに足る利益を無電柱化が生んでいるようです。
現在の日本の制度では国と自治体が3分の2を負担するという世界的に見ても類を見ない電気事業者優遇の制度をとっています。無電柱化のスピード感においてベトナムやタイとの差はそのあたりにあるのですが、日本ではせいぜい直轄国道の新設電柱の占用を禁止するなどの対策しかとっていません。

市民が「電柱・電線が当たり前」という意識を変え、電線管理者に社会的責任を問うことが、無電柱化を進める一歩になるでしょう。

相談無料の無電柱化に関するお問合せは、下記までお気軽に。

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