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- 無電柱化のメリット・デメリット
2019.11.14 | 社長
この度の台風15号・19号で被害に遭われた方に心よりお見舞い申し上げます。
さて、昨年の西日本を襲った台風21号の記憶も冷めやらぬ中、今回の東日本を襲った連続台風では、想定を超える被害が出ている。
電気事業連合会の資料では、台風15号による停電は、最大93.4万軒に及ぶ。これが、ほぼ解消するのに2週間以上を要した。電柱が1,074本、高圧鉄塔が2基倒壊した。報道では、東電HDは災害特別損失118億円を計上したという。台風19号については調査中とのことだが、わかっている範囲では、中部から東北まで電柱538本が折損・倒壊している。
NTTは、台風15号で電柱・ケーブルの罹災が1,341箇所としている。特に停電により通信ビル機能が停止し、17.2万回線が罹障した。いずれにしても、我々の生活インフラに大きなダメージを与えた。
防災の専門家の話では、地球温暖化に伴う海水温の上昇により、台風の大型化は避けて通れないという。つまり、今後も、この程度やこれ以上の台風が毎年のように来襲する可能性はあるというのだ。さらに東南海地震などの発生も想定される。
今回の台風で浮き彫りになった問題点は3つある。一つ目は、改めて、ライフラインが露出していることの脆弱性だ。欧米やアジア諸国において無電柱化を条例等で規制しているところは多い。景観もさることながら、防災面も大きな要因だ。当初から地中化していた大阪ガスは、先の阪神淡路大震災の教訓を受けて、地震に強い柔軟性のあるポリエチレン管へと、当時の1,200㎞から約16,000㎞と13倍にも更新を進めている。一方、関西電力では、2009年度から2016年度までで7.5万本も電柱が増えている。因みに台風21号では2,000本もの電柱が折損・倒壊している。この差は何か?
二つ目は、電柱も復旧に時間がかかるということだ。無電柱化反対派の論拠の一つが災害時の復旧が遅い、というものだ。確かに一旦被災すれば、掘削を伴うなど、復旧に多少の時間はかかる。ただ、今回の台風15号では、99%停電を解消するのに実に約300時間(12・5日)を要している。完全に解消するのには2週間以上かかっているのだ。これでは、復旧が早いとはとても言えない。また、水害があれば、地上機器(トランス等)はだめになって使えないだろう、とも言われる。これも誤解だ。台風19号で無電柱化された武蔵小杉駅周辺が冠水したが、地上機器に被害はなかった。仙台駅周辺の地中設備も同様だった。そもそも、地中化された設備は、自然災害に強いのだ。被災をしなければ、復旧の必要は無い。当然ながら倒壊することもないので、家屋を破壊することや緊急輸送路を塞ぐこともない。どちらが安全かは自明だ。
三つ目は、停電による断水、通信障害など、あらゆるものに電気が使われており、停電が起こるとそれらすべてが使えなくなるということだ。特にタワマンの被害は深刻だ。電気室はほとんどのマンションで地下に設置されている。そこが冠水すれば、すべて止まる。今回、停電の実態が電力会社も把握しきれなかったようだが、強風で電柱からの架空引込線が切れている箇所がかなりあったと聞く。同様に通信線も切れた。これを「隠れ停電」という。このことにより、最新のスマートメーターも役に立たなかったし停電が確認されていないので、復旧が後回しになった。
こうしたことを踏まえても、ライフラインの強靭化は喫緊の課題だ。
国土交通省は、無電柱化推進計画を策定18年度から3か年で1,400㎞の無電柱化に着手する。これに昨年の台風21号の被害を受けて、防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策として、さらに1,000㎞を追加する。また、無電柱化をさらに促進するために無電柱化推進部会(座長:屋井鉄雄 東工大副学長)を3年前に立ち上げた。そこでは、地方自治体や地整向けの低コスト手法導入の手引きの策定や各ワーキンググループ(WG)による取り組みを進めている。今年立ち上がった合意形成WGでは、自治体が無電柱化に初めて取り組む際の指針となるようなガイドラインの策定を進めている。
筆者は民間の立場で参画。民間WGの主査を務めている。ここでは、低コスト製品・工法を広く募り、WG内での検討と電線管理者への照会を経て、先述の手引きに角形ポチエチレン管や様々な素材と形状の小型BOX、3D地中探査など、16の製品・工法が掲載された。本年度も引き続き募集を行い、次の改訂版の手引きへの掲載を行う予定だ。さらに、無電柱化の阻害要因を改めてWGの委員と議論を行い、「こうしたら無電柱化は進む!」という提言をしたいと考えている。
無電柱化はコストが高いというのが、これまでの常識だ。しかし、そこに囚われていてはいつまで経っても、停電や通信障害は無くならない。そろそろ、国民を上げて、無電柱化はどうやったら進むのか?を議論すべき時に来ていると思う。その先頭を走り続けたい。
無電柱化に関して、詳しく知りたい方、お聞きしたい方は当社ジオリゾームへどうぞ。 お問い合せお待ちしております。
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